敬語に迷ったら、まず「相手がすること」か「自分がすること」かを考えます。相手が資料を読むなら「ご覧になります」、自分が読むなら「拝見します」。動作をする人を分けると、言葉を選びやすくなります。
難しい言い方を重ねる必要はありません。仕事でよく使う例文から、今の場面に合う表現を探してみましょう。
まずは3つの働きで考える
| 種類 | 使う場面 | 例 |
|---|---|---|
| 尊敬語 | 相手など、敬意を示す人の動作を述べる | お客様がいらっしゃいました。 |
| 謙譲語 | 自分側の動作を通して相手への敬意を示す、または自分側のことを丁重に述べる | 明日、御社へ伺います。/田中と申します。 |
| 丁寧語 | 話し相手に丁寧に伝える | こちらが資料です。/確認します。 |
たとえば「部長が言いました」を尊敬語にすると「部長がおっしゃいました」です。自分が部長へ伝えるなら「部長に申し上げました」。同じ「言う」でも、誰が誰に話すのかで変わります。
仕事で使う動詞の言い換え
| もとの言葉 | 相手がする場合 | 自分がする場合 |
|---|---|---|
| 言う | おっしゃる | 申し上げる/申す |
| 行く・来る | いらっしゃる/お越しになる | 伺う/参る |
| 見る | ご覧になる | 拝見する |
| 聞く | お聞きになる | 伺う/拝聴する |
| 読む | お読みになる | 拝読する |
| 食べる・飲む | 召し上がる | いただく |
| 知っている | ご存じだ | 存じている/存じ上げている |
| 会う | お会いになる | お目にかかる |
表の言葉は、すべての文にそのまま当てはまるわけではありません。「存じ上げています」は人について、「存じています」は事柄について使う、といった違いもあります。次の文例と合わせて使ってみてください。
「伺う」と「参る」はどう使い分ける?
「伺う」は、訪ねる相手に敬意を示す言い方です。取引先への訪問なら「明日14時に御社へ伺います」と言えます。「お伺いします」も定着した表現として使われています。
「参る」は、自分の行動を話し相手へ丁重に伝える言い方です。たとえば「明日、大阪へ参ります」。訪問先の人を敬う働きとは分けて考えます。自分が映画館へ行く話なら、「映画館へ行きます」で十分です。
社内の上司と、社外へ話すときの違い
| 場面 | 言い方の例 |
|---|---|
| 社内で上司の在席を確認する | 田中部長はいらっしゃいますか。 |
| 取引先へ、自社の上司が不在だと伝える | 田中はただいま席を外しております。 |
| 取引先の担当者へ電話を取り次いでもらう | 営業部の佐藤様はいらっしゃいますか。 |
| 取引先へ、自分の名前を伝える | 株式会社○○の山田と申します。 |
社外の相手に自社の人のことを話すときは、上司であっても「田中部長がおっしゃっています」などと敬称・尊敬語を重ねず、「弊社の田中が申しております」と伝えます。必要なら「弊社営業部長の田中」と役職を説明できます。
依頼・確認・お礼は、短い文でも丁寧に伝わる
| 伝えたいこと | 例文 |
|---|---|
| 資料を送ってほしい | 恐れ入りますが、○○の資料をお送りいただけますか。 |
| 内容を確認してほしい | 添付資料の金額をご確認いただけますか。 |
| 待ってほしい | 確認いたしますので、少々お待ちいただけますか。 |
| 理解したと伝える | 承知いたしました。○日までに対応いたします。 |
| 対応へのお礼 | 早速ご対応いただき、ありがとうございます。 |
| 電話を切る | お時間をいただき、ありがとうございました。失礼いたします。 |
お願いするときは、何をしてほしいかと期限も具体的に伝えます。「ご確認いただけますと幸いです」だけで終えるより、「○月○日までに金額をご確認いただけますか」と書くと、相手が動きやすくなります。
二重敬語は、長くするほど丁寧というわけではない
「お読みになられる」は「お読みになる」で十分です。「おっしゃられる」は「おっしゃる」と短くできます。一方で「お伺いする」「お召し上がりになる」は、定着した言い方として使えます。
「お読みになっていらっしゃる」のように、それぞれの動詞を敬語にして「て」でつなぐ形もあります。見た目の長さだけで正誤を決めず、相手を敬うつもりで自分の動作まで尊敬語にしていないかを確認しましょう。
「させていただく」に迷ったら
相手などの許可を受け、自分がありがたくその行動をする場面では、「させていただく」が使えます。たとえば、相手の資料を使いたいときの「こちらの資料を使わせていただけますか」です。
単に予定を知らせるなら「明日ご連絡いたします」、発表を始めるなら「発表いたします」と書けます。前後の事情によって自然さが変わるため、言葉だけを切り出して一律に禁止する必要はありません。
もう少し詳しく知りたい方へ:5種類の分け方
文化庁の「敬語の指針」では、敬語を次の5種類に分けています。先ほどの謙譲語を2つに分け、美化語を別に扱う考え方です。
| 種類 | 覚えるための例 |
|---|---|
| 尊敬語 | 先生がおっしゃいました。 |
| 謙譲語Ⅰ | 先生のお宅へ伺います。訪ねる相手への敬意を示す。 |
| 謙譲語Ⅱ(丁重語) | 山田と申します。自分側のことを丁重に述べる。 |
| 丁寧語 | 資料です。/確認します。 |
| 美化語 | お料理、ご飯など、ものごとを美しく表す。 |
よくある質問
- 「了解しました」は必ず失礼になりますか?
-
言葉だけで一律には決まりません。改まった仕事の場面では「承知いたしました」とすれば丁寧です。社内では普段のやり取りにも合わせてください。
- 「ご利用いただき」と「ご利用くださり」はどちらが正しいですか?
-
「ご利用いただき、ありがとうございます」「ご利用くださり、ありがとうございます」は、どちらも使えます。
- 褒められたときに「とんでもございません」は使えますか?
-
謙遜して相手の褒め言葉に応じる場面では使えます。「ありがとうございます。皆さんのおかげです」と感謝を伝える言い方もあります。
- 敬語を間違えたら、長く謝ったほうがよいですか?
-
気づいたところを短く言い直して、用件を続けましょう。相手の名前や伝える内容を間違えた場合は、正しい内容をはっきり伝えてください。
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参考・出典
参照日:2026年9月5日。

